フィンランドの食文化とぜひ体験してみたい地元の食材

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バスケットいっぱいの新鮮なフィンランド野菜

クレジット: Emilia Hoisko

フィンランド料理は湖や畑や森から集めた新鮮な天然食材が中心

北欧料理やスカンジナビア料理といえば、フィンランドを真っ先に思い浮かべる人は少ないかもしれません。だからこそ驚く人々が多いのでしょう。北欧でひっそりと育まれてきたフィンランドの食文化は、実用性と目的意識のバランスが絶妙です。土地と深く結びつき、季節により特徴づけられ、控えめな創造力に導かれた豊かな食文化。

ここでは、料理は派手に誇示するものではありません。心地よく、新鮮で、その瞬間にふさわしいことが大切です。ヘルシンキの市場で楽しむランチ、ハイキング中に森で摘んだベリー類、ラップランドの大自然の中にあるレストランでの食事、どこであっても地元で採れた食材が、心を込めて調理され、高い意識をもって提供されます。

フィンランドの食の哲学も、過去の人々の営みの集大成です。フィンランドは、戦争、配給制、長い冬を生き抜いてきた国です。食材が乏しく、無駄にできるものは何もない時代が続きました。「希少性は発明の母」の精神は今日でも、地域資源の創意工夫に満ちた利用、優れた保存技術、利用可能なものを最大限に活用する文化に受け継がれています。

クレジット : Harri Tarvainen, Kota Collective
クレジット: NLUX, Jaska Poikonen

フィンランドの食文化を育んだ自然と季節

フィンランドの食文化は、その気候によって育まれました。生育期は短いながらも日照時間が長い夏と、極寒の厳しい冬。このリズムにより地元の食材は滋味に富み、漬物、発酵、乾燥といった調理法が必然的に発達しました。

ここで旬の食材を食べることは、ライフスタイルの選択ではなく、伝統です。初夏になると、新じゃがいもと新鮮なディルが全国の食卓に並びます。秋には、森で野生のキノコ、リンゴンベリー、根菜類が採れます。冬になると、フィンランドの人々は氷の下の魚を釣ります。寒さの中にも自然の恵みを見出すのです。穀物もまた、日々の暮らしに欠かせない食材です。

Credits: Julia Kivelä

ぜひ味わいたいフィンランドの食材

フィンランド料理を味わうのに料理評論家である必要はありませんが、基本を押さえておくと役に立ちます。フィンランドの食文化はシンプルさと旬の食材を基盤としていますが、すっきりと繊細なものから、ダイナミックで土の香りがするものまで、忘れられない味覚を楽しむことができます。

ぜひ一度は味わってみたい、地元の食材をご紹介します。

クレジット : Harri Tarvainen, Kota Collective
クレジット: NLUX, Jaska Poikonen

天然魚とジビエ

18万を超える湖と長く険しい海岸線を持つフィンランドにおいて、魚は食卓に欠かせない食材です。高級レストラン、港沿いのカフェ、夏のコテージのキッチン。どこであっても魚には、最低限の素材で自然の風味を生かす調理法が用いられています。フィンランド北部、とくにラップランド地方で、トナカイは伝統的な食材であり、今でも広く食卓に上っています。フィンランドの厨房ではヘラジカのほか、ライチョウやアヒルといった森の野鳥も調理されます。すべて厳格な動物福祉規制に従って狩猟されたものです。

以下に、おすすめの食材をご紹介します。

  • - モトコクチマス(Muikku/ムイック):湖に生息する小魚で、カリカリに揚げて丸ごと食べることが多いです
  • バルト海産ニシン:酢漬け、燻製、または揚げて、ライ麦パンを添えます
  • 北極イワナとヨーロピアンパーチ:ヘルシンキからラップランド地方まで、レストランで人気です
  • トナカイのシチュー(Poronkäristys/ポロンカリストゥス):トナカイ肉の薄切りをソテーした伝統料理

おすすめ情報:燻製はフィンランドで人気の魚の調理法で、とくに群島地域や湖畔の町で好まれています。スモークサーモンのような冷たい燻製もあれば、鮭や北極イワナの温かい燻製もあります。

クレジット: Elina Manninen / KEKSI

ベリー類とキノコ

クレジット: Harri Tarvainen

フィンランドの森は、散策だけでなく採集の場でもあります。自然享受権(Jokaisenoikeus)のおかげで、誰もが自由に歩き回り、キノコやベリー類を採集することができます。実際、多くの人々が権利を行使しています。採集はフィンランドの伝統の一部であり、何世代にもわたって受け継がれてきた儀式です。

夏や秋になると、森はあざやかな色、ふくよかな香り、豊かな風味に恵まれ、生き生きと輝きます。こうした食材はフィンランドの食文化に深く根付いているため、朝のお粥からミシュランの星付きデザートまで、あらゆる場面に登場します。

貴重な自然の恵みをご紹介します。

  • ビルベリー(ブルーベリーとは違います):濃い色でみずみずしく、デザートに重用されます
  • リンゴンベリー:酸味のある赤い実で、塩味やスパイシーな料理にぴったり。よくジャムにして添えられます
  • クラウドベリー :主に北部産の珍しい黄金色のベリーで、よくレイパユーストと一緒に食べます
  • アンズ茸とポルチーニ茸:秋の味覚を代表する野生のキノコで、多くのレストランにあります

おすすめ情報:おそらく世界で一番美味しいイチゴ(Mansikka/マンシッカ)とラズベリー(Vadelma/ヴァデルマ)を味わってみませんか?6月から7月にかけてフィンランドの夏のマーケットに行くと、こうした美味しい果物がいたるところで見つかります。

ライ麦パンとフィンランド産の穀物

フィンランドでは、パンは単なる添え物ではなく、毎日食べるものであり、心の安らぎであり、故郷を象徴するものです。朝食、昼食、夕食のテーブルにはほぼ必ず、スライスされたパンがバスケットに盛られ、バターやチーズが添えられることもあります。そのパンは、大半がライ麦を原材料にしています。

ライ麦、オーツ麦、小麦、大麦は、フィンランドの穀物農業の基盤であり、国土の南部から西部に広がる畑で栽培されています。北欧の冷涼な気候のおかげで、フィンランドの穀物はゆっくりと成長し、豊かな滋味を育むため、パンやお粥に独特の風味をもたらします。

以下に、おすすめの定番をご紹介します。

  • ライ麦パン(Ruisleipä/ルイスレイパ):フィンランド流の黒っぽくて濃厚なライ麦パン
  • オートミール(Kaurapuuro/カウラプーロ):オーツ麦のお粥のことで、朝食の定番としてよくベリー類やバターを添えて食べます
  • カレリアンピーラッカ(Karjalanpiirakka):ライ麦の薄い生地に米やジャガイモを詰め、卵バターをトッピングしたもの

おすすめ情報:ライ麦パンはフィンランド人の主食ですが、「群島パン」とも呼ばれるサーリストライスレイパ (Saaristolaisleipä)は沿岸部ならではの変わり種です。これはフィンランド南西部発祥のパンで、ライ麦粉と小麦粉、麦芽、水飴を混ぜて作られており、黒っぽくて濃厚で、ほんのり甘いのが特徴です。

クレジット: NLUX, Jaska Poikonen

根菜と旬の野菜

大きな注目は集めないかもしれませんが、根菜や旬の野菜はフィンランド料理に欠かせない基本の食材です。北欧の清らかな土壌で育ち、季節の移ろいに応じて収穫される野菜は、家庭の台所から高級レストランの厨房まで重宝され、毎日の食卓に上ります。

その美味しさの秘密は?フィンランドの夏は日照時間が長く、野菜はゆっくりと成長するため、自然な甘みや濃厚で深みのある風味が生まれます。華やかさに欠ける分、美味しさをコツコツと蓄えているのです。これだけは食べておきたい食材をご紹介します。

  • 新じゃがいも:ディルとバターを添えて楽しむ夏の風物詩
  • スウェーデンカブ、ビーツ、カブ、ニンジン:ローストやピューレにして食べます
  • イラクサ、ケール、キャベツ:一年を通してスープや焼き料理に使われます
  • 長ネギ:これも夏の定番、夏のマーケット広場でよく見かけます

おすすめ情報:こうした食材は、ビールやアイスクリーム、チョコレートなど、意外な食品にも使われています。

クレジット: NLUX, Jaska Poikonen

乳製品

クレジット: Okkolan lomamökit

フィンランドの食文化において、乳製品は昔から欠かせない存在です。厳しい北欧の気候では穀物の栽培よりも酪農が適していたため、牛乳は自給自足の象徴であり、日々の食卓に欠かせない栄養源として定着してきました。現在でも、クリーミーなソースや郷土のチーズ、有名なデザートに至るまで、乳製品はフィンランド料理の要となっています。近年では、ほとんどのスーパーで植物由来の代替品も豊富に手に入ります。

フィンランドならではの乳製品をぜひ味わってみてください:

  • ピーマ(Piimä) – ほのかに酸味のある飲む発酵乳。さっぱりとした味わいで、消化を助ける飲み物として親しまれています。
  • ナチュラルヨーグルトとヴィーリ(Viili) – ヴィーリは独特のとろみがある発酵乳製品。甘くないプレーンヨーグルトのように、朝食として食べられることが多いです。
  • 地元産のクリームやミルク – スープやソース、焼き菓子に使われ、素朴で豊かなコクを加えてくれます。
  • アイスクリーム – 純粋なミルクから作られ、ビルベリーやトウヒの新芽など、季節感あふれるユニークなフレーバーも魅力です。

ローカルのおすすめ:
ぜひ「レイパユースト(leipäjuusto)」を探してみてください。伝統的なフィンランドの“きしむチーズ”で、温かくしてクラウドベリージャムと一緒に提供されるのが定番。素朴さと上品さを併せ持つ、フィンランドらしいデザートです。

フィンランドで食べたいもの — 定番グルメガイド

伝統的なフィンランド料理や、その味を楽しめる場所についてもっと知りたいですか?この記事では、外せない名物料理をご紹介します。

クレジット: Julia Kivelä

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